相続登記に必要な書類のご案内

相続登記に必要な書類のご案内

相続登記の義務化にともない、相続登記を行うために必要な書類のお問合せが多くなっています。

相続登記を行うためには、ご自身でされる場合も、司法書士に依頼されるにしても、以下の書類をご準備いただく必要がございます。

被相続人(お亡くなりになられた方)が遺言書を作成しておられるかどうかで、必要書類が異なりますので、ご注意ください。

1.2.3については、遺産分割協議を前提とした必要書類を記載しており、これらに加えて、遺産分割協議書も作成する必要があります。

 

1.被相続人に関する書類

  • 戸籍謄本(出生から死亡までのすべてのもの)
    被相続人(お亡くなられた方)の出生から死亡までの戸籍謄本が必要です。これにより相続人全員を確認するための手続きを行います。
  • 除籍謄本および改製原戸籍
    戸籍が改製されている場合には、被相続人の除籍謄本や改製原戸籍(かいせいはらこせき)も必要になります。
  • 戸籍の附票
    被相続人の最終住所や登記簿上の被相続人の住所と最終住所が同一であるかどうかを確認するために、戸籍の附票をご用意ください。

 

2.相続人に関する書類

  • 戸籍謄本(すべての相続人分)
    相続人全員の戸籍謄本又は抄本が必要です。これにより、相続権の確認を行います。
  • 住民票(登記名義人になる相続人分)
    登記名義人になる方の住民票をご用意ください。

 

3.印鑑証明書

  • 遺産分割協議書を作成する際、すべての相続人の印鑑証明書をご準備ください。これにより、相続人の同意を確認します。

 

4.不動産に関する書類

  • 名寄帳または評価証明書
    被相続人が所有していた不動産の確認のため、名寄帳(なよせちょう)や固定資産評価証明書をご準備ください。これにより、相続対象となる不動産の特定を行います。
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)
    相続する不動産が登記されているか確認するために、登記事項証明書をご用意ください。登記情報提供サービスを利用して、登記情報を取得されてもいいでしょう。

 

5.被相続人が遺言書を作成している場合

  • 遺言書
    被相続人が遺言書を作成していた場合、その遺言書に基づいて相続手続きを進めることができます。遺言書には以下の種類があります。

    • 公正証書遺言
      公証役場で作成された公正証書遺言の場合、そのまま相続登記の手続きを進めることが可能です。
    • 自筆証書遺言
      自筆証書遺言がある場合、遺言書の検認手続きが必要です。家庭裁判所で遺言書の検認を受けた上で、相続登記を進めます。
    • 秘密証書遺言
      秘密証書遺言の場合も、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

遺言書に基づく相続登記の場合、通常、遺産分割協議は不要です。

 

6.被相続人が自筆証書遺言保管制度を利用しているかどうか分からない場合の確認方法

被相続人が自筆証書遺言保管制度を利用しているかどうかわからない場合、法務局に対して遺言書の保管を確認し、必要な手続きを行うことができます。詳しくは、最寄りの法務局にお問合せください。

手順:

  1. 法務局に照会
    被相続人が自筆証書遺言保管制度を利用していたかどうかを確認するため、法務局に「遺言書保管事実証明書」の交付を申請します。申請は、全国どこの法務局でも可能です。
  2. 申請に必要な書類
    • 被相続人の死亡の事実を確認できる戸籍謄本
    • 申請者の本人確認書類(運転免許証など)
    • 交付申請書
  3. 交付された証明書の内容
    遺言書が保管されている場合には、証明書の交付を受け、その後、遺言書の内容に従って手続きを進めます。なお、遺言書の内容については、家庭裁判所での検認手続きが不要です。

 

7.被相続人が公正証書遺言を作成しているかどうかわからない場合の確認方法

公正証書遺言は、公証役場に保管されているため、遺言書が作成されているかどうかわからない場合、以下の手続きを通じて確認が可能です。詳しくは、最寄りの公証役場にお尋ねください。

手順:

  1. 公証役場に照会
    被相続人が公正証書遺言を作成していたかどうかを確認するため、公証役場に遺言書の有無を照会します。全国どこの公証役場でも確認手続きを行えます。
  2. 申請に必要な書類

・被相続人の死亡を確認できる戸籍謄本

・申請者の本人確認書類(運転免許証など)

 3.遺言書の謄本交付申請
被相続人が公正証書遺言を作成していた場合、公証役場から遺言書の謄本を交付してもらい、その内容に基づいて相続手続きを進めます。公正証書遺言は検認手続きが不要ですので、直接相続登記手続きを行うことが可能です。

 

8.被相続人が遺言書を作成していない場合

被相続人が遺言書を残していない場合には、法定相続分に基づいて遺産を分割するか、相続人間で遺産分割協議を行い、その結果に基づいて登記を行う必要があります。

  • 遺産分割協議書
    相続人が複数いる場合には、遺産分割協議書を作成します。すべての相続人の署名および実印の押印が必要となります。遺産分割協議により、どの相続人がどの不動産を相続するかを決定します。

 

9.法定相続情報一覧図について

相続登記の際、通常は相続人全員の戸籍や住民票など多くの書類を提出する必要がありますが、「法定相続情報一覧図」を作成し、その写しを提出することで、これらの書類の代わりとすることができます。これにより、相続に関わる手続きを簡素化できます。

法定相続情報一覧図作成のために必要な書類

  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
    法定相続情報一覧図を作成するために、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要です。
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
    被相続人の最終住所を確認するため、住民票の除票または戸籍の附票が必要です。
  • 相続人全員の戸籍謄本
    相続人全員の戸籍謄本が必要です。これにより相続関係を確認します。
  • 相続人全員の住民票
    相続人の現住所を確認するために、住民票をご準備ください。
  • 法定相続情報一覧図の申出書
    法務局に対して法定相続情報一覧図を申請するための書類です。これは、法務局の窓口やオンラインで入手できます。

法定相続情報一覧図が使用できる場面

  • 不動産の相続登記
    相続登記の際、通常提出が必要な被相続人および相続人に関する戸籍や住民票の代わりに、法定相続情報一覧図を提出することができます。
  • 金融機関での相続手続き
    銀行や証券会社などで相続手続きを行う際にも、法定相続情報一覧図を利用することで、戸籍や住民票を複数回提出する手間を省くことができます。
  • 税務署での相続税申告
    相続税の申告時にも、相続関係を証明する資料として法定相続情報一覧図が有効です。
  • 保険金の請求手続き
    生命保険などの保険金請求においても、相続人が特定される書類として利用できます。

 

10.司法書士に依頼する場合のメリットと報酬について

相続登記手続きは非常に複雑で、必要書類の収集や遺産分割協議書の作成など、多くの手間がかかります。司法書士に依頼することで、これらの作業を円滑に進めることができ、相続手続きが迅速かつ正確に行われるメリットがあります。

日本司法書士会連合会が実施した報酬アンケートによると、相続登記にかかる報酬は、地域や依頼内容によって異なりますが、相場は概ね5万円から15万円程度です。報酬が自由化されていることもあり、詳細は、各司法書士事務所で異なりますので、ご注意ください。

司法書士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。

  • 法的なミスを防ぐ
    書類の不備や誤記により、手続きが滞ることを防げます。司法書士は法律の専門家として、すべての手続きを正確に進めることができます。
  • 煩雑な手続きを代行
    多くの書類を収集し、各種申請を行う煩雑な手続きをすべて司法書士が代行します。
  • 手続きの迅速化
    司法書士の経験と知識により、手続きがスムーズに進められ、早期に相続手続きを完了させることができます。

以上が、相続登記手続きに必要な書類と、司法書士に依頼する際のメリットおよび報酬に関するご案内です。

 

文責:司法書士 濵川康夫